台湾からの訪日旅行者数は回復・増加が続いており、インバウンド集客を本格化させたい企業・施設にとって、台湾市場は今もっとも取り組む価値のある市場のひとつです。ただ、「繁体字に翻訳したチラシを置けばいい」「台湾人スタッフを雇えばいい」という表面的な対応だけでは、継続的な集客にはつながりません。本記事では、訪日台湾人の特徴・旅行スタイル・情報収集の行動から、集客チャネル・コンテンツ設計・受け入れ体制の整備まで、実践的な視点で解説します。
💡 こんな方に読んでほしい
- 台湾からの訪日旅行者を集客したいと考えている飲食・宿泊・観光施設の担当者
- インバウンド施策をこれから始める企業のマーケター
- 台湾人旅行者への対応を強化したい地方自治体・観光協会の担当者
- 繁体字でのコンテンツ制作・SNS運用の方向性を検討している方
台湾インバウンドの現状
訪日外国人数の回復が続く中、台湾は韓国・中国に並ぶ日本への主要送客市場のひとつです。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2024年の訪日台湾人数は約340万人超(コロナ前2019年の水準に接近)まで回復しており、一人当たりの消費額も高い傾向が続いています。
台湾市場が「狙い目」である理由
- 訪日意欲が継続的に高い
- 消費単価が高い
- 日本文化への親和性
台湾からの訪日客は継続的な訪日意欲が高く、年に複数回訪日する人も珍しくありません。宿泊・食事・体験・買い物への出費を惜しまない傾向があり、一人当たりの旅行消費額が高水準である点も特徴です。
さらに、日本語や日本文化への理解・好感度が高く、ローカルな体験やグルメ、伝統文化への関心も強いという、日本文化への親和性の高さも見られます。
💡 台湾人旅行者が「また日本に行きたい」と思う理由のひとつに「毎回新しい発見がある」という点があります。東京・大阪・京都といった定番エリアだけでなく、北海道・九州・四国など地方エリアへのリピーター需要も増えており、地方施設にとってもチャンスが広がっています。
台湾人旅行者が重視する5つのポイント
台湾インバウンド施策を成功させるうえで最も重要なのは、「台湾人旅行者がどんな人たちで、どんな行動をするのか」を正確に理解することです。表面的な対応(繁体字翻訳・中国語スタッフの配置)だけでなく、旅行者の行動・価値観・情報収集パターンを把握したうえで施策を設計することが求められます。
日本ならではのグルメ
台湾人インバウンドの傾向として、グルメへの強いこだわりが挙げられます。単なる観光客向けではなく、地元に愛される店を探索する傾向があります。
台湾は世界有数の「食の文化」を持つ国であり、日本食への期待値は非常に高く、「現地の人が行くお店」や「行列でも並ぶ価値があるお店」といった、本場の味や話題性のある食体験を求めるユーザーが多くなっています。
ローカル体験・穴場スポット
ローカル体験・穴場志向が高まっており、深掘りした日本の文化に触れたい、自分だけの特別な思い出を作りたい方が増えています。
例えば定番の観光地を巡るだけでなく、「台湾人旅行者があまり知らない穴場」や「地元の人に混じった体験」を好むリピーターが増加しています。
写真・SNS映え
Instagramへの投稿を前提とした「写真・SNS映え」する体験、スポット、料理へのニーズも非常に高いです。視覚的なインパクトがあり、友人やフォロワーにシェアしたくなるようなユニークさが求められています。
利便性・情報の分かりやすさ
利便性・情報の分かりやすさも重要視です。アクセス情報、営業時間、予約方法などが母国語である繁体字で分かりやすく提供されているかどうかが、来店や予約を決定づける重要な要因となります。情報収集のストレスを軽減することが求められます。
情報の信頼性
「安心・信頼」できる環境、具体的には、日本語がわからなくても安心して利用できる環境が、全体の体験満足度を大きく左右します。
信頼性を高め期待値を調整する意味で、「実際に行った人の写真・体験談」も重要視されます。
台湾インバウンド集客の4つのチャネル
訪日台湾人に「来てもらう」ためには、台湾の旅行者が実際に使っている情報収集チャネルで、自社の情報を届ける必要があります。以下の4つのチャネルを目的に合わせて組み合わせて使うことが重要です。
チャネル① 繁体字コンテンツ×SEO
台湾でも検索エンジンはGoogleが主流です。「日本旅行 グルメ おすすめ」「東京 温泉 おすすめ」のような繁体字クエリで自社のコンテンツが上位表示されれば、旅行計画フェーズの台湾人旅行者に継続的にリーチできます。
その際に日本語のコンテンツを翻訳するのではなく、台湾人が実際に検索するクエリから設計し直すことが大切です。また、「アクセス・営業時間・予約方法」「おすすめポイント・体験談」など、旅行者が知りたい情報を網羅することを意識しましょう。
💡 繁体字コンテンツでのSEOは、英語や日本語コンテンツと比べてまだ競合が少なく、適切な設計で取り組めば比較的短期間で上位表示を狙いやすい市場です。
チャネル② SNSマーケティング(Instagram・YouTube・Dcard)
台湾人旅行者が情報収集に使うSNSは複数あり、旅行フェーズによって使い分けが異なります。特に以下の3プラットフォームは、インバウンド集客との相性が高いです。
プラットフォーム | 特徴 |
| |
YouTube |
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Dcard |
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チャネル③ KOL(キーオピニオンリーダー)・インフルエンサー活用
台湾では、旅行ジャンルのKOL(インフルエンサー)が旅行先の意思決定に大きな影響を与えます。フォロワー数が多いKOLより「旅行文脈での信頼性・エンゲージメント率」が高いマイクロKOLの方が費用対効果が高いケースもあります。
KOL施策で注意したいのは、「フォロワー数が多い=効果が高い」ではないという点です。旅行ジャンルに特化した3〜5万フォロワーのKOLが投稿した日本旅行コンテンツが、数十万フォロワーの総合系KOLより高い予約効果を生んだケースがあります。KOLの「台湾旅行者コミュニティ内での信頼度」を重視した選定が重要です。
チャネル④ OTA・旅行プラットフォーム掲載
台湾人旅行者が旅行の予約に使うプラットフォームへの掲載は、特に体験・アクティビティ系ビジネスにとって重要な集客チャネルです。
プラットフォーム | 特徴・向いている業種 |
Klook | 体験・アクティビティ・観光施設の予約に特化。台湾ユーザーの利用率が高い |
KKday | 台湾発のOTA。日本の体験・ツアー商品を探す台湾人旅行者に直接リーチできる |
Booking.com / Agoda | 宿泊施設向け。台湾からの予約比率が高いプラットフォーム |
じゃらん / 楽天トラベル | 繁体字対応ページがある場合は台湾からの検索流入も期待できる |
台湾人に「刺さる」コンテンツの作り方
どのチャネルを使うにしても、「台湾人が見たいと思うコンテンツ」になっているかどうかが成否を分けます。日本人目線のコンテンツを台湾向けに流用するだけでは、刺さりません。
台湾人旅行者が求める情報
台湾人観光客にとって、アクセス情報は非常に重要です。「行ったら閉まっていた」という事態を避けるために、営業時間や定休日、予約の有無も確認したい情報です。
予算感と利便性の確認のために、料金体系と支払い方法(カード・キャッシュレス対応)の情報も必須。日本語がわからなくても問題なく利用できるかを確認するため、繁体字での説明やスタッフの言語対応についても知りたいニーズがあります。
繁体字コンテンツ制作で必ず押さえるポイント
台湾のインバウンド対策では、繁体字を使用し、簡体字との混同を避けることが必須です。
その際に、機械翻訳に頼らずネイティブライターによる執筆やネイティブチェックを必ず実施し、台湾人が実際に使用する表現や言い回しを用いる必要があります。
料理名や施設名については、現地で一般的に使われている台湾での名称に合わせることが重要です。日本語の名称をそのまま使用する場合は、読み仮名や説明を加えてわかりやすくする必要があります。
💡 繁体字コンテンツの制作で最も気をつけるべきは「正しいが不自然な繁体字」になってしまうことです。文法的には正しくても、台湾人が実際に使う言い回しとは異なる表現が多く、読んでいて「外国人が書いた文章」と気づかれてしまうと信頼感が落ちます。ネイティブチェックを制作フローの必須工程に入れることで、この問題は大幅に改善できます。
季節・タイミングに合わせた先行発信
台湾人旅行者は旅行の1〜3ヶ月前から情報収集を始めるため、コンテンツの発信タイミングは「旅行シーズンの2〜3ヶ月前」を意識することが重要です。
旅行シーズン | 台湾からの需要が高い時期 | 先行発信の目安 |
|---|---|---|
桜シーズン(3〜4月) | 1〜2月から予約ピーク | 前年12月〜1月にコンテンツ発信 |
夏休み(7〜8月) | 5〜6月から情報収集開始 | 4〜5月に先行公開 |
紅葉シーズン(10〜11月) | 8〜9月から情報収集開始 | 7〜8月に紅葉スポット情報を発信 |
年末年始・旧正月 | 台湾の連休に合わせた旅行需要 | 旧正月前の1〜2ヶ月前から発信 |
台湾人旅行者の情報収集フロー
台湾人旅行者は、旅行の計画から来店・購買まで、複数のSNS・プラットフォームを使い分けながら情報収集を行います。
フェーズ | 探している情報 |
|---|---|
計画(1〜3ヶ月前) | 「〇〇旅行 おすすめ」「〇〇 グルメ」などの総合情報 |
絞り込み(1〜2週間前) | 口コミ・体験談・具体的な行き方 |
旅行直前〜旅行中 | 現在地からのルート・混雑情報・リアルタイム確認 |
帰国後 | 旅行記・レビュー投稿(UGCが次の旅行者を動かす) |
💡 台湾人旅行者の「帰国後の投稿(UGC)」が次の旅行者の意思決定に大きな影響を与えます。口コミ投稿がバズると、数週間後に同店舗・同施設への台湾からの予約が急増するケースも実際にあります。「来てもらって終わり」ではなく、「来てくれた人がSNSに投稿したくなる体験」を設計することが、長期的な集客の鍵です。
台湾インバウンドの対応設計
集客施策と同じくらい重要なのが、「実際に来てくれた台湾人旅行者に満足してもらえる受け入れ体制」の整備です。口コミ・SNS投稿につながる体験を設計することで、次の集客にもつながります。
① 繁体字表記の整備
メニュー・案内板・商品説明を繁体字で用意することは最低限の対応です。ただし、単純な翻訳ではなく「台湾人が読んで自然に理解できる表現」になっているかをネイティブに確認してもらうことが重要です。
- メニュー:料理の説明・アレルギー情報(特にハラール・ビーガン対応)の記載
- 施設案内:トイレ・更衣室・Wi-Fi・喫煙所の場所
- 支払い方法:使えるカードの種類・キャッシュレス決済の対応可否
② キャッシュレス決済への対応
台湾では電子決済やクレジットカードの利用率が高いため、現金のみの対応では利便性が低いと判断され、顧客を逃すリスクがあります。
主要クレジットカード(VISA・Mastercard)への対応は必須で、台湾ユーザーが主に利用するLINE PayやApple Payなどのモバイル決済への対応も検討すべきです。
さらに、決済の可否を事前にSNSやOTAページに明記しておくことで、予約時の障壁を下げることができます。
③ SNS投稿を「したくなる」体験設計
台湾人旅行者がSNSに投稿したくなるような体験・空間・演出を意図的に設計することで、UGC(ユーザー生成コンテンツ)による口コミ拡散につながります。
具体的には、撮影映えするスポットやサービス、プレゼンテーションを充実させることや、「台湾人限定クーポン」「SNS投稿で割引」といった投稿インセンティブを設定することが有効です。
また、スタッフによる積極的な声かけや、記念写真の撮影補助なども、顧客体験を向上させ、投稿を促す要因となります。
台湾インバウンド対策でよくある失敗
台湾からの観光客を呼び込む施策を進める際、陥りやすい失敗パターンをまとめました。これらを事前に把握することで、無駄なコストや遠回りを防ぐことができます。
台湾インバウンド対策の主な失敗パターン
- 言語の混同: 繁体字と簡体字を混同したままの資料やメニューを使用し続けている。
- デジタル施策の偏り: SNSでの投稿は行っているが、SEO対策を怠っている。
- コンテンツのミスマッチ: 台湾人向けのコンテンツが「日本人目線の翻訳」になっており、現地の感覚に合わず響かない。
- 決済手段の不備: キャッシュレス決済に対応していないため、OTA(オンライン旅行会社)や口コミで低評価につながっている。
- 施策の遅れ: 旅行シーズン直前にコンテンツを公開するなど、準備が間に合っていない。
- 体験設計の不足: 観光客に「来てもらうだけ」で終わってしまい、口コミやSNS投稿につながるような体験設計ができていない。
台湾インバウンドに関するよくある質問
Q. 台湾はなぜ親日なのでしょうか?
A. 台湾で日本に対する好意的な感情が強い背景には、1895年から1945年の日本統治時代が大きく影響しています。
日本は、鉄道や港のような大規模な水利施設といったインフラを整備し、教育の普及、衛生状態の改善、法制度の確立など、台湾の近代化と社会の土台作りを進めました。
現在も日台の経済的・文化的交流は盛んで、統治時代の遺産を肯定的に見る人々が、両国の良好な関係を支える一つの要因となっています。
Q. 台湾のインバウンド需要は?
A. 台湾市場は日本にとって重要な送客元であり、2024年の訪日台湾人数はコロナ禍前の水準に迫っています。
訪日台湾人客は、高い消費意欲と一人当たりの消費額の高さ、年に複数回訪れるリピーターの多さ、そして日本文化への高い親和性とローカルな体験・グルメ・伝統文化への強い関心が特徴として挙げられます。
Q. 台湾人はなぜ日本に来るのか?
A. 多様なショッピング、自然や景勝地の観光、そして温泉入浴などが人気です。
また、スキーや歴史体験といったアクティビティも魅力の一つです。日本の美しい風景を満喫することや、グルメを中心とした飲食体験、そして日本の文化や歴史に触れることに強い関心を持っています。
台湾インバウンド対策は早めに行いましょう
台湾インバウンド対策は、集客(見つけてもらう)・来店(行動してもらう)・体験(満足してもらう)・口コミ(発信してもらう)の4ステップを一貫して設計することが重要です。
台湾インバウンド市場はコロナ前の水準を回復しつつあり、特に個人旅行・リピーターの増加により、情報の「深さ」と「信頼性」が選ばれる理由になっています。今から繁体字コンテンツを積み上げていくことが、中長期的な集客基盤の構築につながります。
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